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歴史的変遷
人権思想と福祉理念は、社会の変化と人々の意識の変革とともに進化してきました。
人間の尊厳における人間性の尊重は、まず自由権(国家が個人の生活に介入しない自由な意思決定と活動を保障する権利)から始まり、その後に生存権(人間らしい生活を保証する権利)へとつながりました。
人権思想の歴史的な流れ
中世の宗教支配から人間復興を目指したルネサンスによって、神から人間中心への思想が誕生しました。
国民主権による自由・平等の権利を宣言
国民主権による自由・平等の権利を宣言
世界で初めて社会権(生存権)を憲法に掲げた
第13条「個人の尊重」
第25条「生存権」
第22条「自己の尊厳と自己の人格の自由な発展」
社会福祉領域での人権・福祉理念の変遷
農地を追い出された農民を労働能力の有無で分類。労働能力をもつ人には就労を強制し、労働能力をもたない人は救貧院に収容して生活扶養を行いました。
労働者への支配と管理を強化
優生思想の歴史
自然淘汰と適者生存が進化の原動力であると考えました
人権の広がり
子どもの人権
「子どもの人権」という概念は、子どもが次世代の担い手として保護されるべきである一方で、大人に従属するものとして扱われず、一人の人格を有する存在として見なされないという歴史があったことへの反省から発展してきました。
この歴史的背景を踏まえ、子どもの権利に関する国際的な取り組みが進められてきました。
子どものための、子どもだけの権利について別の条約を作る必要があるとされて以来、子どもの権利に関する議論が続けられました。
国際連合で採択されたこの条約は、子どもにも自由にのびのびと自分らしく生きる権利があること、一人間のとして尊重されること、そしてどのような差別からも守られることを明確に宣言しています。
日本は、1994年にこの条約を批准しています。
このように、子どもの人権とは、単に子どもを保護するだけでなく、子どもが一人のかけがえのない個人として尊厳を持ち、その能力に応じて自立した豊かな生活を営むための権利を保障することを目指すものです。
女性の人権、ジェンダー
子どもを産み育てる女性は、子どもと同様に、長い間、男性の従属物として扱われ、一人前の「人」とはみなされないという歴史をたどってきました。そのため、公民権や相続権が保障されないなど、「人権」が保障されなかった時期がありました。
このような背景から、「ジェンダー」という言葉は、社会的・文化的に形成された男女の違いや、性別に応じた役割特性を指すようになりました。
社会の中で作られた女性像や男性像、そして「女だから」という理由での差別や役割の押しつけは、現在も存在し、女性が社会で活動しにくい状況が続いています。
特に、女性が行うものとされてきた家事、保育、介護といった領域の仕事は、社会的労働としての位置づけが不十分であり、賃金も低く抑えられている現状があります。
これらの問題に対応するため、性別による不平等や差別の撤廃が重要な課題とされ、取り組みが進められてきました。
国連で採択されました。
男女の労働場面での差別を禁止するために、日本で施行されました。
政策目標として掲げられ、男女が対等な関係を目指すジェンダー・フリー教育も始まりました。
LGBT
「LGBTの人権」とは、生物学的な性差である男女だけでは分けられない人間の多様性を認識し、その人たちが自由にのびのびと自分らしく生きる権利、一人の人間として尊重される権利、そしてどのような差別からも守られる権利を保障するという概念です。
LGBTは、
・Lesbian(レズビアン、女性同性愛者)
・Gay(ゲイ、男性同性愛者)
・Bisexual(バイセクシュアル、両性愛者)
・Transgender(トランスジェンダー、こころとからだの性の不一致)
の頭文字を組み合わせた言葉です。
これは、多数派とは異なる性的指向を持つ人々を意味します。

介護福祉職は、利用者を単なる「介護の必要な人」というレッテルでとらえるのではなく、一人の人間として、かけがえのない存在としてとらえることが求められます。